遺産分配の基本を解説
おカネが絡むと揉める
どなたかが亡くなった場合、その方が持っていた財産的価値のある物はプラスもマイナスもすべて誰かが引き継ぐことになります。
だいたいは亡くなった方に近しいご家族が引き継ぐのですが、やはりお金が関わることなので一筋縄に円満解決とならないことが多いのです。
というか結構揉めます。
そこで今回は民法や遺言に則った基本的な遺産の分配ルールから、イレギュラーなケースまで順に解説していきます。
一般的な遺産分割の流れ
まずは一般的な遺産分割の流れを書きます。
二度手間・三度手間にならないように、全体の流れを先に把握しておくことが重要です。
- 遺言の確認被相続人が有効な遺言を残しているか確認します。
もしも有効な遺言が残っており、相続人全員の合意が得られなければ、遺言通りに分ける必要があります。 - 相続人の確定ご遺族のうち、“誰が相続人なのか"を確定します。
相続人の確定には被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を見ながら確認すると間違いなく安心です。 - 遺産分割協議確定した相続人どうしで法定相続分を目安に遺産分割協議を行います。
相続人全員が合意すれば遺産分割協議は終了となります。
なお協議が不調の場合は調停・審判を活用します。 - 遺産分割協議書遺産分割協議が終了したらその内容を遺産分割協議書にまとめて完了です。
この遺産分割協議書は後の名義変更や変更登記の際に必要ですから、必ず作っておきましょう!
お疲れ様でした。
有効な遺言は無視できない
まず有効な遺言が残されていた場合には法的効力がありますから、原則としては遺言の通りに遺産を分配する必要があります。
「こんなの納得できない!!」と言って、残された相続人が勝手に遺言を無視するのはお勧めできません。
とはいえ有効な遺言が残されていても、相続人全員の合意があればその内容を無視して遺産の分け方を変えることも可能です。
ただし逆の言い方をすれば、相続人のうち1人でも合意してくれなければ遺言通りに分けなくてはいけません。
遺言書に遺産分割の内容が詳細に指定してあり、遺言書の指定通りに分割した場合は、ここで遺産分割は終了となります。
なお遺言書には相続割合のみ指定されている場合や、一部の遺産にのみ指定されている場合は"協議による分割"と遺産分割協議書の作成が必要です。
“有効な"遺言とは?
ちなみに先ほどからしつこいくらいに"有効な"遺言という感じで"有効な"を付けていますが、法律的に無効な遺言を残しておられる方も多いのです。
遺言書が無効になるケースをいくつか記載していますので、確認してみてください。
- 自筆で作成されていない
- 作成日の記載がない
- 遺言書に署名や押印がない
- 訂正方法の間違いがある
- 遺言の内容が不明確
- 遺言書が共同で書かれている
- 遺言能力がない状態で書かれている
- 誰かに書かされている
- 証人になれない人が立ち会った
相続人は戸籍で調べよう!
遺言の確認が出来たら、今度は遺産を引き継ぐ相続人を確定します。
相続人を確定させるためには被相続人が生まれたときから死亡までの連続した戸籍謄本を入手し、戸籍の調査を行います。
生まれたときから死亡までの連続した戸籍謄本が必須な理由は大きく下記の2つです。
遺産分割協議で分配方法を決める
さて遺言の有無と相続人が誰かが分かったところで、いよいよ遺産を誰にどう分配するか決める遺産分割協議を行います。
この遺産分割協議は遺言がなく、相続人が2人以上いる場合は必ず必要です。
ちなみに遺産分割協議が不調の場合は、調停・審判と進んでいきますので、順に説明します。
協議による分割
協議による分割とは遺言書がない場合に、相続人全員の話し合いにより、遺産を分割する方法です。
基本的には民法で定められた法定相続分を目安に協議を進めていくことになりますが、不動産などはっきりと分けづらい遺産が多い場合には、相続人がそれぞれ譲り合ったり、不動産を手放したりといった工夫が必要です。
なお遺言書が残っていたとしても、遺言書の内容ではない分配にしたり、遺言書に一部しか指定がない場合もこの協議による分割を行います。
協議が決裂…まず調停
協議による分割で円満に遺産の分配が決まれば「めでたしめでたし」なんですが、相続人それぞれの思惑があり、円満に遺産分割の方法が決まらない場合も多々あります。
そんな時は相続人どうしで延々話し合っても決着しないので、調停による分割を活用しましょう。
調停を希望する場合は相続人の1人あるいは数人で他の相続人に対して申し立てをします。
調停では家事審判官と調停委員が仲介し、相続人どうしの話し合いで解決を目指していきます。
ここで合意が得られれば、調停証書が作成され、遺産分割協議書の代わりとなり遺産分割は終了です。
さらに審判へ
家事審判官と調停委員とが仲介しても話し合いがまとまらない場合は、自動的に審判へ移行します。
審判では遺産の種類や相続人の属性(年齢や生活状況等)などを踏まえて、家事審判官が分割方法を決定します。
この審判で作成された審判書には法的強制力がありますので、相続人が納得できない!といっても従わなくてはいけません。
なおこの審判書も遺産分割協議書の代わりとなり遺産分割は終了です。
遺産分割協議書を作成する理由
ここまで遺言書がない場合の遺産の分配ルールを解説してきました。
分割方法が決まったら、その合意内容をまとめた遺産分割協議書を作成しておきましょう。
この遺産分割協議書は法律等で作成が義務付けられているわけではありませんが、下記2点の理由で必ず作成することをお勧めします。
遺産分割協議書に何を書く?
さて遺産分割協議書を作成するとして、いったい何を書いたらいいのでしょう?
実は遺産分割協議書はこう書いてねというルールはありません。
ということは相続人が自由に作っていいのですが、絶対に書かなくてはいけないことは下記です。
相続財産の具体的な内容とは?
遺産分割協議書には相続の内容が特定できるように具体的に記載する必要があります。
遺産相続で頻繁に登場する不動産と金融機関について例を挙げて説明します。